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『邦楽アレンジシリーズ』の歌詞文語アレンジの人:萬月邸の作詞担当・芙雪(綾部ふゆ)のブログです。

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『和楽・紅一葉』歌詞解説と意訳|文語調歌詞担当:綾部ふゆ

Posted by 芙雪(綾部ふゆ) on

 
こちらの記事には、11月21日にavexより発売されました『和楽花道中 杵家七三社中 傑作撰~ボカロ曲を演奏して戴いた~』に収録されております『和楽・紅一葉』の歌詞の意訳と解説を掲載しています。
原曲と比較して楽しんで頂けたら嬉しいです。
歌詞の文語訳を快諾して下さいました黒うさP様に、改めて御礼申し上げます。






今回は、歌詞アレンジのテーマに「大正浪漫」というものを盛り込みました。
黒うさPさんのイメージは「昭和とかその位」とのことで、大正浪漫の香りが色濃く残る昭和初期辺りも視野に入れています〜。
もちろん、『原曲の世界観やメッセージ性を保持する』というテーマが前提としてあるのですが、それに加えての新たな試みでした。
大正時代は、明治時代に起こった「言文一致運動」が浸透していき、書き言葉としての口語体が広がりを見せた時代です。
なので、『和楽・紅一葉』も、そんな風に、ちょっと文語、全体的に口語な雰囲気にしてみました。
同時代の詩人、作家らの文体を参考にしています。
『和楽・いろは唄』が江戸時代の郭言葉による恋の駆け引きだったので、こちらは原曲の通りにぴゅあっぴゅあな悲恋を目指しました。
上記の理由から、今回は解説も意訳もあまり必要ないかな〜?なんて思ってもおりますが、ご興味のある方は是非どうぞ。


今回も、まず初めに『和楽・紅一葉』の歌詞を掲載した後に解説を書かせて頂き、最後に意訳を掲載したいと思います〜。






『和楽花道中 杵家七三社中 傑作撰~ボカロ曲を演奏して戴いた~』収録
【和楽・紅一葉(振り仮名付き)】歌詞



吹きし恋風 ひらりはらはら
君の肩ごしに紅一葉
たゞ(ただ)寄り添へ(え)ば 心通ふ(う)と
薄雲のはたてに物ぞ思ふ(う)

瓦斯灯が照らしてた 遠くの笛の音 御神楽太鼓
ありふれた幸せは 銀座の柳が見てゐ(い)ました

いつか話さう(そう) 出会へ(え)た喜び
淡き愛しさ 知らずにゐ(い)た

吹きし恋風 ひらりはらはら
君の肩ごしに紅一葉
たゞ(ただ)寄り添へ(え)ば 心通ふ(う)と
薄雲のはたてに物ぞ思ふ(う)

穏やかに流れゆけど 時なく映ろふ(うつろう)誘ひ(い)し火影
過ぎ去りしものは全て 私の傍(かたえ)を離れません

日々を漂ひ(い) 願ひ(い)よ届けと
両の手合はせて(わせて) 落つる涙

胸に秘めたる 思ひ(い)出がある
君の肩ごし 桜紅葉
から紅に 水くゝる今 この愛を 永久に捧ぐ

吹きし恋風 ひらり舞ひ(い)散れ
今宵暗夜(あんや)を 紅く染めて
たゞ(ただ)寄り添つて(そって) 抱かれてゐ(い)たい
悲しみが 空に消えるまで






【歌詞の内容についての解説】


恋風(こいかぜ)
この言葉は『恋心のせつなさを、風が身に染みるのにたとえていう語』です。
こちらの意味に加えて、小杉天外(こすぎてんがい)という作家が明治36年に発表した、女学生・初野ちゃんが主人公の悲恋物語『魔風恋風(まかぜこいかぜ)』から単語をもらいました。
大和和紀先生の『はいからさんが通る』という漫画で定着した「リボンに矢絣(やがすり)の着物に海老茶袴、ブーツに自転車」という、明治・大正の女学生のイメージが出てきます。
『近代デジタルライブラリー』で読めますし、岩波書店さんからも出ていると思いますので是非。
つ『近代デジタルライブラリー:魔風恋風

薄雲のはたてに物ぞ思ふ
こちらは、平安時代前期の勅撰和歌集『古今和歌集』の484番目の和歌、
『夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ あまつそらなる人を恋ふとて』
を引用しています。誰が詠んだのかは記録に残っていません。内容からして、恐らく女性だと言われていますが、それも定かではないようです。
意味は『夕暮れ時は、雲の果てへ向かって物思いをする。手の届かない、遥か遠くのあのお方のことを恋い慕って』というものです。
この和歌を見付けた時は不思議な縁を感じたものです。和歌全体の意味が『紅一葉』にぴったりだと思いました。

瓦斯灯
『瓦斯灯/ガス灯』と言えば『大正浪漫』!
大正時代の東京は、公共施設などでガス灯が使われ、街灯が夜を照らしたそうです。
曲中の場所を特に定めているわけではありませんが、近代的な町並みと、江戸時代の面影が残る町並みとが混在していた時代をイメージしました。

銀座の柳
こちらも『大正浪漫』を導く単語として取り入れました。
関東大震災前である大正10年に銀座の車道の拡大に伴い柳が撤去されたようですが、それまでは柳が数多く植わっていたそうです。その後、大正浪漫の華やかさを未だ引き継ぐ昭和7年に、銀座を彩るシンボルとして二代目の柳が植えられ、その景色が多くの流行歌に取り入れられました。
『銀座の柳』については、中央区観光協会様や、民間の団体などが支援活動をしているようです。

から紅に 水くゝる今
こちらも『古今和歌集』に収められている在原業平(ありわらのなりひら)の和歌、
ちはやぶる神代もきかず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
を引用しています。こちらの和歌はご存知の方もとても多いと思います。
平安時代初期のプレイボーイ、業平殿の才覚が余すところなく発揮されている歌ですよねぇ。
意味は『数々の不可思議なことが起こったとされている神々の時代ですら聞いたことがない。奈良の竜田川が、鮮やかな紅色の紅葉を水面に浮かべて(あるいは水面に映して)、水を絞り染めにするだなんて』という感じです。
ですので、こちらを引用したことによって、『桜紅葉が川の水を絞り染めにしている今』と解釈して頂けると嬉しいです。
ぴゅあな悲恋にこのザ・プレイボーイの歌を引用したのは、業平が、かつての恋人・藤原高子(ふじわらのたかいこ)に向けて詠んだという説があるためです。
この時、高子は既に時の帝の側室となり、二人の間には皇太子がいました。
いくらなんでも皇太子の母になった彼女に手は出すまい……と思うわけで、この時点で高子とは別れていたはずです。
そんな中で、美しい屏風を見ながら高子の前でこの歌を詠んだのですが、もしも彼が高子との関係を歌にさり気なく詠み込んでいたとしたら、鋭い機知による、かつての恋人に向けた真摯な歌かもしれないな、なんて思ったのです。
もちろん、真相はタイムマシンにお願いな感じですが(笑)、そんなことも含めて楽しんで頂けたら嬉しいです。

今宵暗夜を 紅く染めて
原曲では『暗夜』の部分が『闇夜』となっていますが、こちらは大正時代に発表された志賀直哉の長編小説『暗夜行路』から単語をもらいました。
小説の内容は『紅一葉』にリンクしないのですが、時代感を出したかったので引用しました。






以上が、歌詞の大まかな解説です。
お楽しみ頂けたなら嬉しいです。
では最後に、歌詞の意訳を掲載し、原曲の動画のご紹介などをして終えたいと思います。







【文語調に訳した歌詞の現代語訳(意訳)】


秋風のような恋心が舞い上がって、ひらひらとはらはらと、
君の肩越しで、恋風に乗った紅葉が散っていきます。
ただ君に寄り添えば、気持ちが通じるのではないかと、
(『古今和歌集』にある読み人知らずの歌『夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ』のように)
薄く広がっている雲の果てへ向かって物思いをします。


瓦斯灯が照らしていた、遠くで鳴る笛の音と、お神楽太鼓が響くお祭り。
ありふれた幸せは、銀座の柳が見ていました。

いつか話そう、君に出会えた喜びを。
胸に灯る淡い愛しさを、知らずにいました。

秋風のような恋心が舞い上がって、ひらひらとはらはらと、
君の肩越しで、恋風に乗った紅葉が散っていきます。
ただ君に寄り添えば、気持ちが通じるのではないかと、
(『古今和歌集』にある読み人知らずの歌『夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ』のように)
薄く広がっている雲の果てへ向かって物思いをします。


穏やかに流れてゆくけれど、絶えず私の前に立ち現れる彼の火影。
物事は移り変わって、過ぎ去ってしまうけれど、
それらは常に私の傍にあり続けます。

日々を漂いながら、願いよ、どうか君に届けと、
両手を合わせたら涙が零れました。


誰にも言えない思い出が、胸の内にあるのです。
君の肩越しに、色づいた私の思いのような桜の紅葉が、ほら。
(在原業平の『ちはやぶる神代もきかず竜田川』の和歌のように)
川を絞り染めにしている今、この愛を永久に捧げます。


秋風のような恋心に巻かれた紅葉、ひらりと舞い散れ。
今宵、暗い夜を紅に染めながら。
ただ寄り添って、抱かれていたい。
悲しみが空に消えるまで、ずっと、ずっと。






長々とお付き合い頂きありがとうございました!
最後に、原曲の『紅一葉』の動画をご紹介したいと思います。











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