花窈堂

『邦楽アレンジシリーズ』の歌詞文語アレンジの人:萬月邸の作詞担当・芙雪(綾部ふゆ)のブログです。

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「悪ノ召使」文語調歌詞解説|歌詞文語訳・文担当:綾部ふゆ

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本日、ニコニコ動画に新作動画がUPされました!
鏡音レンくんの名曲「悪ノ召使」、クラシカルアレンジ・文語歌詞バージョンです。
御本家様の世界観の悲しさや美しさ、潔さに惚れ、
更に、今回使用させて頂いたアニメーションとクラシカルアレンジに感激して、
各P様から許可を頂きつつ、杏ノ助と少しずつ、かつダイタンに!進めていった企画でした。

今回は、全体的にヨーロッパのお伽噺のようなイメージの曲でしたので、
歌詞も、明治~昭和初期のような、近代的な文語を目指しました。
当時、海外からやってきた童話や詩集などを翻訳した文語のものがありますよね。
あんなイメージです。
(具体的に言うと、大正時代の児童向け雑誌「赤い鳥」のイメージだったりします。「はいからさん」の時代の子供達が読んでた絵本や雑誌のイメージです~)
と、言うことで、今回は、主に大好きな西条八十先生の詩集を参考にして、時代考証を行っています。

更に、初の試みとして、声優兼役者の友人・亀田理紗ちゃんに語りを入れて貰いました。
冒頭の言葉は「主の祈り」を抜粋しました。
キリスト教的な思想が織り成す複雑な世界観を、動画に凝縮したつもりです。


さてさて!それでは、
\毎度恒例、綾部の文語歌詞解説がはじまりますよーッ!/
今回は、兎に角原曲の意を損ねないように注意して訳しましたので、
解説なしでご覧になっても意味が直ぐにお分かりになると思います。
なので、先ずは歌詞と語りの文を全文掲載し、
一応、ココこだわってますよ!という部分をちょこっとご紹介して、
最後に、文語訳した歌詞を意訳したものを載せてみようと思います。
今回は意訳は不要かなーと思ったのですが、
文語訳も直訳(逐語訳)ではないので、敢えて載せてみます。

宜しくお付き合い下さいませー!






「悪ノ召使」文語調歌詞


天にまします我らの父よ
我らに罪を犯す者を我らが赦す如く我らの罪をも赦し給へ
我らを試みに遭はせず悪より救ひ出だし給へ
國と力と榮えとは限りなく汝のものなればなり



汝は王女 我は召使
定め分かちし あはれなる雙子
汝を守る その為ならば
我は惡にさへ成りゆかむ


むかしむかし、あるところに、齢十四にして国を統べる王女になった娘がおりました。
娘には、顔のよく似た弟がおりましたが、
幼い頃に生き別れ、別々の道を歩むことを余儀なくされました。

大人達の思惑によって、娘は、可憐な独裁者へと育て上げられたのです。



祈りの中我らは生まれぬ
祝福するは鐘樓(しょうろう)の鐘
大人達の思惑どほり
我らの未來は二つになれり

たとへ世界の總てが
汝の敵(てき)に變じようとも
我が汝を守るから
汝は其處で笑ひ給へ

汝は王女 我は召使
定め分かちし あはれなる雙子
汝を守る その為ならば
ああゝ惡にさへ成りゆかむ

異國を尋ねし折りに見し
翡翠の髪の優美な彼女
その優しげな聲と笑顔に
一目で我の心亂るる

されど王女が彼女のこと
“肉骸(むくろ)にせばや”と願ふなら
我はそれに應へよう
なにゆゑ涙の流れたる

汝は王女 我は召使
定め分かちし 狂ほしき雙子
「けふの御菓子はブリオツシユです」
汝は笑ふ 無邪氣なまでに

もうすぐこの國は終はるだらう
怒れる國民達の手で
これも因果だと言ふのならば
我は敢へてそれに背かむ

「わたくしの服をお召し下さい」
「召したまま疾く異郷の地へ」
“我らの罪をも赦し給へ”
“惡より救ひ出だし給へ”

(──AMEN.)

我は王女 汝は逃亡者
定め分かちし 悲しき雙子
汝を惡だと言ふならば
我とて血を分けし姉弟ぞ

むかしむかしあるところに
惡逆無道(あくぎゃくぶどう)の王國の
頂(いただき)より睥睨(へいげい)せしは
いとど愛しき我の姉君

たとへ世界の總てが(つひにその時はやつてきた)
汝の敵(てき)に變じようとも(終はりを告げし鐘の鳴る)
我が汝を守るから(民衆などには目もくれず)
汝はどこかで笑ひ給へ(君は妾(わらわ)の口癖を言ふ)


二人がこの世に生まれ落ちたのは、
神の悪戯なのでしょうか。
……いいえ、天にまします我らの父が、
そのような気紛れを起こされるはずがございません。

きっと、これは、我らの父がお与えになった試練なのでしょう。

「悪逆の王女」と怖れられている姉と、
王女を守るために、召使いとなった弟。
二人の悲しく狂おしい物語は、これにて──。







【歌詞の解説】


語りと歌詞が、それぞれ口語と文語なのはナゼ?
明治に「言文一致運動」が行われるまでは、話し言葉と書き言葉が大きく違うということを踏まえてみました。
文語は、平安時代に完成したと言える言葉遣いで、皆さんもお馴染みの「悪より救ひ出だし給へ」というような、
今の言葉とはちょっと違う文法で書かれる言葉ですね。
今では不思議なカンジもしますが、明治時代までは、話し言葉と書き言葉が違う文法だったのです。
なので、今回はそれをイメージしてみました。
亀ちゃんの語りのテロップを動画の中に入れなかったのは、こういう理由からです。

我は惡にさへ成りゆかむ
「成りゆく」は「次第にある状態に移っていく」という意味の言葉だそうです。
原曲では「なってやる」という歌詞ですが、
レンくんの決意の確かさや時間の流れも込められたらと思い、
「直ぐに悪になる」というようなニュアンスではなく、
次第に移り変わっていく、というような言葉を選びました。

我らは生まれぬ
パッと見聞きすると、「私たちは生まれない!」という、打ち消しの言葉のように感じますが、
この「ぬ」は、完了の助動詞の終止形です。
『源氏物語(桐壺)』の「世になく清らなる玉の男御子さえ、生まれ給ひ『ぬ』」と同じ用法で使用してます。
ざっくり言うと、「生まれてしまった」というかんじでしょうか。

祝福するは鐘樓の鐘
「鐘楼」という言葉から、近代的な雰囲気を感じ取ってもらえればと思い採用しました。

肉骸にせばや
この「肉骸」という言葉は、八十さんの詩集に度々登場する単語でして、
八十さんの造語かもしれませんし、当時は共通の言葉として成立していたものかもしれません。
アイマイで申し訳ないのですが、なんにせよ、非常に生々しい感じがして気に入っています。

「けふの御菓子はブリオツシユです」
ホラ…、「目からブリオッシュ」って言うタグがさ…好きでさ…(チラッ チラッ
と言う冗談はさておき。
冒頭の通り、今回のイメージが、
「西洋の御伽話を翻訳したもの」ですので、
敢えて単語をそのままにしています。
横文字の言葉と歴史的仮名遣いが合わさった際の、
不思議な魅力に少しでも触れて頂けたなら嬉しいです。

「わたくしの服をお召し下さい」
「召したまま疾く異郷の地へ」
“我らの罪をも赦し給へ”
“惡より救ひ出だし給へ”

最大の見せ場に、敢えて「主の祈り」を入れたのは、
この曲の表題でもある「悪」とはなんだろう?という思いからでした。
この物語の世界は、厳密に言えばキリスト教的な世界とは別かもしれませんが、
仮にそうだとした時に、
王女にとっての悪、
召使にとっての悪、
姉と弟にとっての悪、
大人達や民衆にとっての悪、
これらは全て、違うものだと思うんです。
でも、これらの「悪」にそれぞれが立ち向かおうとした時に、
縋ったりするのが、ただひとつの「神」というところに、
私はなんだか、とっても複雑な思いを抱きました。
一神教を否定している訳ではありませんが、
「それって、人々にとってどういうことなんだろう」
という問いを、この動画を通して伝えてみたかった思いがあります。

悪逆無道
「悪逆非道」の類義語です。
そのままでも良かったのですが、文語萌え根性を丸出しにしてみました。
少なくとも鎌倉時代にはあった言葉なので使用しています。

いとど愛しき
「いとど」は、「いとをかし」の「いと」が重なったものです。
なので、「もんのッすっごく愛おしい!」という意味になります。
杏ノ助も、ここはぐっと気持ちを込めて歌ってくれています。






【「悪ノ召使」文語歌詞の意訳】


君は王女 僕は召使
あわれな運命を背負った双子
君を守る その為ならば
僕は時間をかけて、確実に、確かに、悪に成りゆこう


祈りの中僕らは生まれてしまった
祝福するのは、鐘楼の鐘の音
大人達の思惑通り
僕らの未来は二つに分かれてしまった

たとえ世界の全てが
君の敵に変わることがあるとしても
僕が君を守るから
君はそこで、どうぞ笑っていて

君は王女 僕は召使
あわれな運命を背負った双子
君を守る その為ならば
ああ、僕は、時間をかけて、確実に、確かに、悪に成りゆこう


外国を訪れた時に見た
翡翠色の髪の、美しくて上品なあの子
その優しげな声と笑顔に
一目で僕は恋に落ちた

でも、王女が彼女のことを
“亡き者にしたい”と願うなら、
僕はそれに応えよう
どうして、涙が零れるのだろう?

君は王女 僕は召使
狂おしい運命を背負った双子
「今日のお菓子はブリオッシュです」
そう言うと、
君は笑うんだ。とても無邪気に


もうすぐこの国は終わるだろう
怒れる国民達の手によって
これも悪行の報いだと言うのなら、
僕は敢えて、それに背こう

「わたくしの服をお召し下さい」
「召したまま、一刻も早く遠い土地へ」
“我らの罪をも赦し給え”
“悪より救い出だし給え”


(──AMEN.)


僕は王女 君は逃亡者
悲しい運命を背負った双子
君を悪だと言うのなら、
血を分けた弟の僕だって、悪なんだ。


むかしむかし、あるところに
悪逆の限りを尽くした王国の、
頂点から天下を睨んでいたのは、
とても、とても愛おしい、僕の姉君。


たとえ世界の全てが
(ついにその時はやってきた)
君の敵に変わることがあるとしても
(終わりを告げる鐘が鳴っている)
僕が君を守るから
(民衆などには目もくれず)
君はどこかで、どうぞ笑っていて
(君はわたくしの口癖を言う)






以上です。
最後までお読み下さりありがとうございました!

ちなみに、今回語りを担当してくれた「友達の亀ちゃん」こと亀田理紗ちゃんは、
声優さんとして活動されてます。
それと同時に、声優のイトケンさんこと伊藤健太郎さん主催の劇団K-Showに所属し、
役者としても活動されてますー。
是非Twitter、ブログへどうぞ!亀ちゃん、今日もええ声やでー!

>>亀ちゃんのTwitterとBLOG「Turtle Days」<<

そして最後に、ご本家様の動画をご紹介して終わりたいと思います。
ありがとうございました。






萬月邸 綾部ふゆ


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